MACD(マックディー)は、2本の移動平均線の「差」を使って、トレンドの向きと勢いの変化を見ようとする指標です。この記事では、MACDとは何かを、MACDライン・シグナル・ヒストグラムの3つの要素とクロスの見方を中心に、初めての人向けに説明します。特定の銘柄や通貨ペアの売買をすすめたり、値動きを予想したりするものではありません。
この記事で分かること
- MACDライン・シグナル・ヒストグラムの意味と計算式
- ゴールデンクロス・デッドクロス、ゼロラインの一般的な見方
- 株とFXで使うときの違い
- 遅れ(ラグ)やだましなどの弱点
MACDの仕組みと計算方法
MACD(Moving Average Convergence Divergence、移動平均収束拡散法)は、米国のジェラルド・アペル(Gerald Appel)が1970年代後半に考案した指標です。短期と長期の移動平均線は、近づいたり(収束)離れたり(拡散)を繰り返します。その距離を数値にしたものがMACDです。
計算には、直近の価格を重く扱う指数平滑移動平均(EMA)を使います。標準的な設定は「12・26・9」です。
| 要素 | 計算式(標準設定) | 見た目 |
|---|---|---|
| MACDライン | 12期間EMA − 26期間EMA | 線 |
| シグナル(シグナルライン) | MACDラインの9期間EMA | 線(MACDラインより動きが遅い) |
| ヒストグラム | MACDライン − シグナル | ゼロを中心にした棒グラフ |
EMAは「前回のEMA+α×(今回の終値−前回のEMA)」で計算し、α=2÷(期間+1)です。12期間ならα=2÷13となります。ヒストグラムは、のちにトーマス・アスプレイ(Thomas Aspray)が加えたものとされています。
仮の数字で見てみる
仮に、ある日の12期間EMAが1,050円、26期間EMAが1,030円だったとします(説明用の架空の数字です)。MACDラインは+20です。シグナルが+15ならヒストグラムは+5で、MACDラインがシグナルを上回っている状態です。プラスの値は「短期の平均が長期の平均より上にある」ことを表します。
なお、MACDは価格の「差」なので、株価1,000円の銘柄と10万円の銘柄では数値の大きさがまったく違います。異なる銘柄どうしで数値を比べることには向きません。
一般的な見方・使われ方
MACDラインとシグナルのクロス
もっともよく知られているのがクロスの見方です。
- ゴールデンクロス:MACDラインがシグナルを下から上に抜ける。上昇の勢いが強まりつつあるサインと読まれることが多い
- デッドクロス:MACDラインがシグナルを上から下に抜ける。下落の勢いが強まりつつあるサインと読まれることが多い
ヒストグラムがゼロを横切るタイミングは、このクロスと同じ瞬間です。
ゼロラインとの関係
MACDラインがゼロより上なら短期EMAが長期EMAより上、つまり上昇方向のトレンドが優勢と読まれます。ゼロより下ならその逆です。ゼロより下でのゴールデンクロスと、ゼロより上でのゴールデンクロスは意味合いが違う、と考える人もいます。
ヒストグラムの伸び縮み
ヒストグラムの棒が短くなっていくのは、MACDラインとシグナルの差が縮んでいる、つまり勢いが弱まっていることを示します。クロスより早く変化に気づく手がかりとして見られることがあります。
ダイバージェンス
価格は高値を更新しているのにMACDの山が低くなっている、といった逆行現象(ダイバージェンス)も、勢いの変化の目安として使われます。考え方はRSIのダイバージェンスと同じです。
株とFXでの使い方の違い
- 株:日足や週足で中期的なトレンドの変化を見る使い方が多く見られます。取引時間外のニュースや決算で始値が大きく飛ぶと、MACDも急に動きます。
- FX:平日ほぼ24時間取引されるため、1時間足など短い足でも使われます。短い足ほどクロスの回数が増え、だましも増えやすくなります。また、レバレッジをかけるため、だましにあったときの損失が大きくなりやすい点に注意が必要です。
弱点・だましと注意点
- 遅れ(ラグ)がある:MACDは移動平均をもとに計算し、シグナルはさらにその平均です。そのため、クロスが出たときには値動きの大部分が終わっていることがあります。
- レンジ相場でだましが多い:一定の幅で上下する相場では、ゴールデンクロスとデッドクロスが短い間隔で繰り返し出て、シグナルどおりに動かないことが増えます。
- 上限・下限がない:RSIのように0〜100の範囲がないため、「ここまで来たら過熱」という決まった水準はありません。
- 設定で結果が変わる:「12・26・9」は標準値にすぎず、設定を変えるとクロスのタイミングも変わります。
MACDを使っても必ず利益が出るわけではなく、損失が出る可能性があります。FXや信用取引のようにレバレッジをかける取引では、預けた資金以上の損失が出ることもあります。
他の分析との組み合わせ方
MACDは「トレンドの向きと勢い」を見るのが得意な一方、過熱感の判断は苦手です。そこで、0〜100の範囲で過熱感を見るRSIと組み合わせたり、値動きの幅を見るボリンジャーバンドと合わせて使われたりします。また、クロスが出た場所が、過去に何度も意識された価格帯(サポートライン・レジスタンスライン)の近くかどうかを確かめる人もいます。それぞれの考え方は、このシリーズの「RSI」「ボリンジャーバンド」「サポートライン・レジスタンスライン」の記事で解説しています。
よくある質問
MACDとRSIはどちらがよいですか?
目的が違うため、優劣はありません。MACDはトレンドの変化、RSIは過熱感を見るのが一般的です。どちらも万能ではありません。
ゴールデンクロスが出たら上がりますか?
必ず上がるわけではありません。クロスは過去の値動きから計算した結果で、その後の値動きを保証するものではなく、だましも多くあります。
パラメーターは変えたほうがよいですか?
変える人もいますが、決まった正解はありません。まずは標準の「12・26・9」で見方に慣れるのが一般的です。
まとめ
- MACDはアペルが考案した指標で、12期間EMAと26期間EMAの差がMACDライン
- シグナルはMACDラインの9期間EMA、ヒストグラムはその差
- クロスやゼロライン、ヒストグラムの伸び縮みで勢いの変化を見る
- 遅れがあり、レンジ相場ではだましが多い。損失の可能性も忘れずに
参考資料・出典
- Gerald Appel『Technical Analysis: Power Tools for Active Investors』(2005年)
- StockCharts ChartSchool「MACD (Moving Average Convergence/Divergence Oscillator)」
- 金融庁「資産形成の基本」(NISA特設ウェブサイト)
- 金融先物取引業協会「投資者の皆さま」