移動平均線は、株やFXのテクニカル分析で最も基本的な指標の一つです。多くのチャートで最初から表示されているため、目にしたことがある方も多いでしょう。この記事では、移動平均線の計算方法(SMAとEMA)、ゴールデンクロス・デッドクロス、グランビルの法則といった一般的な使い方と、遅れやだましなどの弱点をやさしく解説します。

この記事で分かること

  • 移動平均線の意味と、SMA・EMAの計算方法
  • 線の向き、価格との位置関係、ゴールデンクロス・デッドクロスの見方
  • グランビルの法則の考え方
  • 株とFXでの使い方の違い、弱点と注意点

この記事は指標の仕組みを説明するもので、特定の銘柄や通貨ペアの売買をすすめたり、値動きを予想したりするものではありません。

移動平均線の仕組みと計算方法

移動平均線は、一定期間の価格(多くは終値)の平均値を計算し、その値を日々つないだ線です。期間をずらしながら平均を取り直すため「移動」平均と呼ばれます。日々の細かな上下をならして、大きな流れ(トレンド)を見やすくする役割があります。

単純移動平均線(SMA)

最も基本的な形で、直近n期間の終値を合計してnで割ります。

SMA =(直近n期間の終値の合計)÷ n

仮に、直近5日間の終値が100円、102円、101円、104円、103円だったとすると、5日SMAは(100+102+101+104+103)÷5=102円です。翌日になると最も古い100円が外れ、新しい終値が加わって計算し直されます(数値は説明のための架空の例です)。

指数平滑移動平均線(EMA)

直近の価格ほど重く扱う平均です。一般的な計算式は次のとおりです。

EMA(今日)= EMA(前日)+ α ×(今日の終値 − EMA(前日))、α = 2 ÷(n+1)

最初の値には、同じ期間のSMAを使うのが一般的です。仮にn=5(α=1/3)、前日のEMAが102円、今日の終値が108円なら、102+(108−102)×1/3=104円になります。同じ条件のSMAより新しい価格の影響を受けやすく、値動きへの反応が早くなります。このほか、新しい価格ほど重みを直線的に大きくする加重移動平均線(WMA)もあります。

よく使われる期間

日本株の日足では5日・25日・75日、週足では13週・26週などがよく使われます。FXでは21日や200日などもよく見られます。期間が短いほど価格に近い動きをし、長いほど滑らかでゆっくり動きます。

一般的な見方・使われ方

線の向きと価格との位置関係

  • 移動平均線が上向きなら上昇傾向、下向きなら下降傾向、横ばいならもみ合いと読むのが基本です。
  • 価格が線より上にあれば、その期間に買った人の平均コストより今の価格が高い状態、下にあれば低い状態と解釈されます。
  • 価格と線の離れ具合(乖離)が大きいと、行き過ぎの目安として注目されることがあります。

ゴールデンクロスとデッドクロス

短期の移動平均線が長期の移動平均線を下から上に抜けることをゴールデンクロス、上から下に抜けることをデッドクロスと呼びます。一般に、ゴールデンクロスは上昇方向への、デッドクロスは下降方向への流れの変化を示す目安とされます。2本の線がどちらも同じ向きに傾いているときのクロスの方が、意味が大きいと説明されることが多いです。

グランビルの法則

米国のJ.E.グランビルが、移動平均線と価格の位置関係を8つのパターン(買いの目安4つ、売りの目安4つ)に整理したものです。主な考え方は次のとおりです。

上昇局面側の4パターン下降局面側の4パターン
下向きだった線が横ばい・上向きに変わり、価格が線を上に抜ける上向きだった線が横ばい・下向きに変わり、価格が線を下に抜ける
上向きの線を価格が一時的に下回る下向きの線を価格が一時的に上回る
上向きの線に価格が近づくが、下回らずに離れる下向きの線に価格が近づくが、上回らずに離れる
下向きの線から価格が大きく下に離れる(反発の可能性に注目)上向きの線から価格が大きく上に離れる(反落の可能性に注目)

これは価格と線の関係を整理した目安で、パターン通りに値動きが続くことを示すものではありません。

株とFXでの使い方の違い

  • 期間の決め方:日本株では営業日ベースの5日(約1週間)・25日(約1か月)など、取引日数に合わせた期間がよく使われます。FXは平日ほぼ24時間取引されるため、時間足の移動平均線も多く使われます。
  • 価格の飛び:東京証券取引所の立会時間は、JPXによると午前9時から11時30分、午後12時30分から15時30分です。取引のない時間に出た材料で価格が大きく離れて始まると、移動平均線との位置関係が一気に変わることがあります。
  • 権利落ちなど:株式では株式分割や配当の権利落ちで価格が不連続になることがあり、チャートによって修正の有無が異なります。
  • レバレッジ:金融先物取引業協会が説明するように、FXは証拠金以上の額の取引ができる仕組みのため、判断が外れたときの損失が大きくなりえます。

弱点・だましと注意点

  • 遅れ(ラグ)がある:過去の価格の平均なので、転換の確認は必ず遅れます。クロスが出たときには、すでに大きく動いたあとということもあります。
  • レンジ相場でだましが増える:横ばいの相場では線が何度も交差し、クロスが出ても流れが続かないことが多くなります。
  • 期間の選び方で結論が変わる:どの期間が正しいという答えはなく、設定によって見え方が変わります。過去のチャートに合う期間を探しても、今後も同じように機能するとは限りません。
  • 急な出来事には対応できない:決算発表や経済指標、要人発言などで相場が急変すると、移動平均線の位置関係は意味を持たなくなることがあります。

金融庁は投資に元本割れのおそれがあると説明しています。移動平均線は値動きを整理する道具であり、使っても損失が出る可能性はなくなりません。

他の分析との組み合わせ方

  • ダウ理論:高値・安値の切り上げ・切り下げと、移動平均線の向きが同じ方向を示しているかを確かめる使い方があります。シリーズ記事「ダウ理論」も参考にしてください。
  • ローソク足:移動平均線の近くでどんな形のローソク足が出たかを見る方法がよく紹介されます。詳しくはシリーズ記事「ローソク足の見方」で解説しています。
  • オシレーター系の指標:トレンド系の移動平均線は過熱感を測るのが苦手なため、RSIなどのオシレーター系の指標と組み合わせて使われることがあります。

よくある質問

SMAとEMAはどちらを使えばよいですか?

どちらが優れているということはありません。EMAは反応が早い分、細かな動きにも反応してだましが増えやすく、SMAは滑らかな分、反応が遅くなります。それぞれの性質を理解したうえで選ぶことが大切です。

ゴールデンクロスが出たら上がりますか?

上がるとは限りません。ゴールデンクロスは過去の価格の平均同士の交差で、将来の値動きを約束するものではなく、出たあとに下落することもあります。

まとめ

  • 移動平均線は一定期間の価格の平均をつないだ線で、トレンドを見やすくする基本の指標
  • SMAは単純平均、EMAは直近の価格を重く扱う平均で、反応の速さが異なる
  • 線の向き、価格との位置関係、ゴールデンクロス・デッドクロス、グランビルの法則が一般的な見方
  • 遅れやレンジ相場でのだましがあり、損失の可能性はなくならない

テクニカル分析全体の位置づけは、シリーズ記事「テクニカル分析とは」で確認できます。

参考資料・出典