株の指標には、PER・PBRのほかにも「ROE」「EPS」「配当利回り」「配当性向」など、アルファベットや漢字の略語がたくさん出てきます。どれも決算資料や証券会社の画面でよく見かけますが、それぞれ何を表し、どう計算するのかを整理しておくと、情報を落ち着いて読めるようになります。この記事では、ROEとは何かを中心に、EPS・配当利回り・配当性向の4つの指標をまとめて解説します。
この記事で分かること
- ROE・EPS・配当利回り・配当性向の意味と計算式
- それぞれの一般的な見方と、指標どうしの関係
- 数字だけで判断してはいけない理由(限界と注意点)
この記事は指標の意味を説明するもので、特定の銘柄の売買をすすめたり、株価や配当を予想したりするものではありません。
4つの指標の意味と計算式
ROE(自己資本当期純利益率)
ROEは「Return on Equity」の略です。日本取引所グループ(JPX)の用語集では、当期純利益を、前期と当期の自己資本の平均値で割ったものとされ、自己資本を「元手」として1年間でどれだけ利益をあげたかを見る、経営効率の指標の1つと説明されています。ここでの自己資本は、純資産の部合計から株式引受権・新株予約権・非支配株主持分を除いたものです。
ROE(%)= 当期純利益 ÷ 自己資本(前期末と当期末の平均)× 100
仮に、C社(架空の例)の当期純利益が10億円、自己資本の平均が100億円なら、ROEは10%です。
EPS(1株当たり当期純利益)
EPSは「Earnings Per Share」の略です。JPXの用語集では、当期純利益を期中平均発行済株式数で割った数値で、1年間の純利益を1株当たりに換算したものとされています。
EPS(円)= 当期純利益 ÷ 期中平均発行済株式数
仮に、C社の当期純利益が10億円、期中平均の株式数が1,000万株なら、EPSは100円です。EPSはPER(株価÷EPS)の計算にも使われます。
配当利回り
JPXの用語集では「株式利回り」の項目で、配当利回りともいい、投資資金と、それが1年間に生むと期待される配当金との比率と説明されています。一般には次の式で表されます。
配当利回り(%)= 1株当たり年間配当金 ÷ 株価 × 100
仮に、C社の株価が2,000円、1株当たり年間配当金が40円なら、配当利回りは2%です。
配当性向
JPXの用語集では、会社が当期純利益のうちどれだけを配当金の支払いに向けたかを示す指標とされています。
配当性向(%)= 1株当たり配当額 ÷ 1株当たり当期純利益 × 100
仮に、C社のEPSが100円、1株当たり配当額が40円なら、配当性向は40%です。
| 指標 | 何が分かるか | 単位 |
|---|---|---|
| ROE | 株主の元手で、どれだけ効率よく利益をあげたか | % |
| EPS | 1株当たりでどれだけ利益をあげたか | 円 |
| 配当利回り | 株価に対して年間配当がどのくらいか | % |
| 配当性向 | 利益のうち、どのくらいを配当に回したか | % |
これらの数字は、上場会社が公表する決算短信や有価証券報告書(金融庁のEDINETで閲覧可能)に記載されていることが多く、まずは会社の公式な開示資料で確かめるのが基本です。
一般的な見方・使われ方
- ROE:一般に、高いほど元手を効率よく使って利益をあげていると読まれます。同業他社や過去の推移と比べるのが基本です。
- EPS:会社の規模が違うと利益の総額は比べにくいため、1株当たりに直して推移を見る使い方が一般的です。EPSが伸びているかどうかは、利益成長を見る目安の1つとされます。
- 配当利回り:JPXの用語集にあるように、銘柄どうしの比較のほか、債券利回りや預金金利など株式以外との比較にも使われます。
- 配当性向:利益をどのくらい株主に配当として還元し、どのくらいを会社に残しているかという、会社の方針を読み取る材料になります。
指標どうしの関係
EPSを1株当たり純資産(BPS)で割るとROEに近い値になり、PBR(株価÷BPS)はPER×ROEの形に分解できます(ROEの分母を平均自己資本とする計算方法などにより、厳密には一致しません)。また、配当性向が同じでも利益が増えれば配当額は増える、といったように、指標は互いにつながっています。1つの数字だけでなく、関係で見ると理解が深まります。
株とFXでの使われ方の違い
ROE・EPS・配当利回り・配当性向は、いずれも個別企業の利益や配当を使う株式向けの指標です。FXでは通貨に利益や配当がないため使われず、代わりに金利差や経済指標、金融政策が注目されます。株価指数全体の利益や配当の水準が話題になることはありますが、通貨の分析で直接使う指標ではありません。
限界と注意点
- ROEは借入が多いと高く出やすい:自己資本が小さいほどROEは高くなるため、借入を増やして自己資本の比率が低い会社は、財務の安全性とセットで見る必要があります。
- 一時的な利益・損失の影響:資産の売却益や特別損失などで当期純利益が大きく動くと、ROE・EPS・配当性向も一時的に大きく変わります。
- EPSは株式数の変化でも動く:自社株買いで株式数が減ると、利益が同じでもEPSは増えます。逆に株式数が増えると減ります。
- 配当利回りが高い理由に注意:株価が大きく下がった結果、利回りが高く見えている場合があります。また、配当は業績などによって減ったり、なくなったりすることがあります(減配・無配)。
- 配当性向が100%を超えることも:利益以上に配当を出している状態で、その水準が続くとは限りません。
- 予想値は外れることがある:会社予想の配当やEPSは将来の見通しであり、確定した数字ではありません。
どの指標も、良い数字だから株価が上がる、配当が続くと決まっているわけではありません。株式投資では、株価の下落や減配などにより損失が出る可能性があります。
ほかの分析との組み合わせ方
ROE・EPSは「稼ぐ力」、配当利回り・配当性向は「株主への還元」を見る指標です。これに株価の水準を見るPER・PBRを組み合わせると、会社の姿をより多面的に捉えられます。PER・PBRについては本シリーズの「PER・PBRとは」、分析全体の考え方は「ファンダメンタルズ分析とは」で解説しています。さらに、決算短信や有価証券報告書で利益や財務の中身を確認し、テクニカル分析で市場の反応を見るなど、複数の視点を持つことが大切です。
よくある質問
Q. ROEは何%あれば良いのですか?
一律の基準はありません。業種や財務の状態によって水準が違うため、同業他社や過去の推移と比べ、自己資本比率など財務の安全性もあわせて確認するのが一般的です。
Q. 配当利回りが高い銘柄を選べば安心ですか?
そうとは限りません。株価下落で利回りが高く見えている場合や、配当が減る可能性もあります。配当性向や業績の推移もあわせて確認しましょう。
Q. EPSとPERの関係は?
PERは株価をEPSで割って求めます。株価が同じならEPSが大きいほどPERは低くなります。
まとめ
ROEは自己資本に対する利益の効率、EPSは1株当たりの利益、配当利回りは株価に対する年間配当、配当性向は利益のうち配当に回した割合を示す指標です。いずれも計算式はシンプルですが、借入の多さ、一時的な損益、株式数の変化、株価の下落などで数字の意味が変わることがあります。指標は判断材料の1つとして、公式の開示資料で確かめながら、ほかの指標と組み合わせて活用しましょう。