「ダブルトップができたら下がりやすい」「三角持ち合いは抜けた方向に動く」など、チャートパターンには決まった見方が数多くあります。では、実際の値動きでどのくらい当てはまるのでしょうか。ベネフィットナビでは、ビットコイン(BTC/JPY)の過去データを使い、10種類のチャートパターンを機械的に検出して、その後の値動きを集計しました。対象は最長で約10年分(2017年〜2026年10月)、結果が出たものだけで1,408件です。

この記事は過去のデータの検証結果をまとめたもので、今後の値動きの予想や、売買をすすめるものではありません。

ビットコインのチャートパターン別の到達率と、偶然の目安の比較(1時間足・4時間足・日足)

結論:全体では「偶然」とほとんど変わらなかった

  • 10種類のパターン全体で、形が完成したあとに「値幅の目安」まで届いた割合は58.6%でした。同じ条件で、ランダムな時点から始めた場合(偶然の目安)は55.2%で、差は約3ポイントにとどまりました。
  • 特に有名なダブルトップ・ダブルボトム・ヘッドアンドショルダーは、件数の多い1時間足・4時間足で、偶然の目安とほぼ同じか下回る結果でした。
  • 偶然の目安をはっきり上回ったのは、1時間足の逆ヘッドアンドショルダー(75%対64%)と、1時間足の下降三角形(55%対40%)くらいでした。ただし30通りの組み合わせを調べているため、偶然でもこの程度の差が出ることはあり得ます。

検証の方法

使ったデータ

時間足期間本数見つかったパターン
1時間足2023年1月〜2026年10月33,588本840件
4時間足2018年1月〜2026年10月19,353本483件
日足2017年1月〜2026年10月3,589本87件

価格データは、暗号資産取引所 bitbank が公開しているAPIのローソク足を使いました。

パターンの見つけ方

ベネフィットナビが毎日公開している「チャートパターンの実例」と同じルールで検出しました。値動きの大きさ(ATR:平均的な1本の値幅)をもとに山と谷を決め、ダブルトップ・ダブルボトム、ヘッドアンドショルダー(三尊)と逆ヘッドアンドショルダー、上昇・下降・対称の三角形、上昇・下降ウェッジ、レクタングル(ボックス)の10種類を判定しています。

検出には、その時点までの直近240本だけを使いました。この240本の範囲を過去から少しずつ(6本ごとに)ずらしながら判定しているため、「後から見ればそう見える」形は含まれず、その時点で実際に見つけられた形だけを数えています。

「到達」と「失敗」の決め方

  • 形の完成:終値がネックライン(三角形・ウェッジ・レクタングルは上下の線)を抜けたとき。
  • 値幅の目安:よく紹介される考え方にならい、パターンの高さの分だけ、抜けた方向に進んだ価格としました。
  • 失敗:目安に届く前に、終値がパターンの外側(ダブルトップなら山の上)まで戻ったとき。

「到達率」は、到達と失敗のどちらかの結果が出たもののうち、到達した割合です。

比べる基準(偶然の目安)

到達率だけを見ても、それが高いのか低いのかは判断できません。目安までの距離が近く、失敗ラインまでの距離が遠ければ、どんな形でも到達しやすくなるからです。また、ビットコインは長い目で見ると大きく値上がりしてきたため、上向きの判定はそれだけで有利になります。

そこで、パターンごとに、同じデータのランダムな時点から「同じ向き・同じ割合の目安と失敗ライン」で始めた場合の到達率を計算し、比べる基準にしました。パターンに意味があるなら、到達率はこの基準をはっきり上回るはずです。

パターン別の結果

表は「到達率 / 偶然の目安(件数)」です。件数が20件未満のものは、参考程度に見てください。

パターン1時間足4時間足日足
ダブルトップ65% / 63%(177件)63% / 59%(98件)71% / 54%(14件)
ダブルボトム60% / 65%(156件)62% / 66%(103件)65% / 71%(20件)
ヘッドアンドショルダー61% / 61%(93件)56% / 52%(34件)67% / 54%(6件)
逆ヘッドアンドショルダー75% / 64%(92件)71% / 64%(45件)67% / 68%(9件)
上昇三角形42% / 41%(64件)42% / 36%(45件)90% / 36%(10件)
下降三角形55% / 40%(71件)50% / 46%(48件)50% / 41%(8件)
対称三角形54% / 43%(57件)43% / 43%(37件)70% / 45%(10件)
上昇ウェッジ31% / 41%(51件)52% / 37%(27件)33% / 36%(3件)
下降ウェッジ55% / 46%(42件)41% / 48%(22件)100% / 48%(2件)
レクタングル64% / 63%(36件)54% / 60%(24件)100% / 56%(4件)

結果から読み取れること

1. 有名なパターンほど「偶然」と見分けがつかない

ダブルトップ・ダブルボトム・ヘッドアンドショルダーは、1時間足・4時間足では件数が多く、数字が安定しています。それでも偶然の目安との差はわずかで、ダブルボトムはすべての時間足で目安を下回りました。少なくともこの検証では、「形ができたから目安まで動きやすい」とは言えませんでした。

2. 下降三角形は、上に抜けることが多かった

下降三角形は一般に「下に抜けやすい」と紹介されますが、1時間足では71件中52件が上に抜けていました。教科書どおりの方向に動くとは限らないことがわかります。

3. 上昇ウェッジは、抜けても目安まで届きにくかった

1時間足の上昇ウェッジは、多くが下に抜けたものの、目安まで届いた割合は31%で、偶然の目安(41%)を下回りました。

4. 日足の数字は件数が少なく、判断できない

日足の上昇三角形(90%)のように目立つ数字もありますが、10件しかありません。件数が少ないと、数件の違いで割合が大きく変わります。

この検証の限界

  • 対象はビットコインだけです。株価やFXでは結果が違う可能性があります。
  • パターンの判定ルールの数値(山と谷を決めるしきい値など)は、一般的な目安をもとに決めたもので、ほかの決め方をすれば結果も変わります。人が目で見て判断する場合とも一致しません。
  • 1時間足は2023年以降、4時間足と日足はそれより長い期間で、相場の状況が同じではありません。
  • 30通りの組み合わせを調べているので、偶然でも一部は基準を上回ります。目立つ数字ほど、たまたまの可能性を考える必要があります。
  • 売買の手数料や、実際に注文が通る価格の違いは考えていません。
  • 過去の結果は、将来も同じになることを示すものではありません。

チャートパターンとどう付き合うか

今回の結果から言えるのは、「形ができた」というだけで値動きの方向を判断するのは心もとない、ということです。チャートパターンは、相場の状況を説明したり、自分の見方が外れたと判断する価格(失敗ライン)をあらかじめ決めたりするための道具として紹介されることもあります。どのような使い方をする場合でも、損失が出る可能性があることを前提に、ご自身の判断で行ってください。

テクニカル分析全体の考え方や限界は「テクニカル分析とは?」、ネックラインの考え方にも関わる水平線については「サポートライン・レジスタンスラインとは?」の記事で解説しています。また、実際に検出されたパターンとその後の結果は、このカテゴリの「【実例】」の記事として記録しています。

注意事項

  • この記事は過去のデータの検証結果で、将来の値動きを示すものではありません。
  • 暗号資産は価格の変動が大きく、元本を大きく割り込むことがあります。
  • 特定の銘柄の売買をすすめるものではありません。投資の判断は、ご自身の責任で行ってください。

参考資料・出典