この記事で分かること
空いている部屋や自宅の一部を旅行者に貸す「民泊」は、会社員でも始められる副業として関心を集めています。ただし、民泊は宿泊のルールを定めた法律の対象で、届出なしに始めることはできません。この記事では、民泊を副業として始める手順を中心に、レンタルスペース・駐車場などのスペース貸しとの違い、守るべき法律、収入にかかる税金までを2026年10月時点の公的情報をもとに整理します。
- 民泊・スペース貸しの仕事内容と向き不向き
- 就業規則・初期費用など始める前の確認ポイント
- 住宅宿泊事業法の届出から運営開始までの流れ
- 年間180日の上限、管理規約、消防法令などのルール
- 確定申告と住民税の申告の考え方
民泊・スペース貸しの副業とは(仕事内容と向き不向き)
民泊は、住宅に旅行者などを有料で泊める事業です。住宅宿泊事業法では「宿泊」を「寝具を使用して施設を利用すること」と定めており(住宅宿泊事業法 第二条)、布団やベッドで泊めるかどうかが一つの分かれ目になります。一方、時間単位で会議室やパーティー会場として部屋を貸すレンタルスペース、空き区画を貸す駐車場は、泊めない形の「スペース貸し」です。ただし、レンタルスペースでも利用者を寝具を使って泊めれば宿泊にあたる可能性があるため注意が必要です。
民泊の主な作業は、予約サイトへの掲載、問い合わせ対応、チェックイン案内、清掃・リネン交換、宿泊者名簿の管理、近隣からの苦情対応などです。
- 向いている人:連絡にこまめに対応できる人、清掃や設備管理を苦にしない人、ルールや書類を正確に扱える人
- 向いていない人:本業中にまったく連絡が取れない人、トラブル時にすぐ動けない人(その場合は管理業者への委託が前提になります)
始める前に確認すること(就業規則・時間・初期費用)
会社の就業規則
厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表し、モデル就業規則でも副業・兼業の規定を設けていますが、実際に副業を認めるか、届出や許可が必要かは会社ごとの就業規則によります。まず自社の規程を確認し、必要なら届け出ましょう。公務員は法令上の制限があるため、所属先への確認が欠かせません。
時間と体制
宿泊者の問い合わせやトラブルは時間を選びません。住宅宿泊事業法では、宿泊させる間に事業者が不在になる場合などは、原則として住宅宿泊管理業者に管理業務を委託しなければならないとされています(住宅宿泊事業法 第十一条)。会社員が自宅以外の物件で行う場合は、委託費用も含めて計画する必要があります。
初期費用
家具・寝具・家電、消防設備の設置や改修、写真撮影、清掃用品、保険などがかかります。物件を新たに借りる・買う場合は、家賃や購入費が大きな負担になります。金額は物件や地域で大きく変わるため、見積もりを取って比較してください。
始め方の手順
- 自治体のルールを調べる:都道府県や保健所設置市等は、条例で区域を定めて民泊の実施期間を制限できます(住宅宿泊事業法 第十八条)。観光庁の民泊制度ポータルサイトにある各自治体の窓口情報を確認します。
- 物件の条件を確認する:「住宅」として台所・浴室・便所・洗面設備があり、現に人の生活の本拠になっている家屋などである必要があります(住宅宿泊事業法 第二条)。賃貸なら貸主の転貸承諾、マンションなら管理規約で民泊が禁止されていないか、管理組合に禁止の方針がないかを確認します。
- 消防署に相談する:観光庁は、届出前に管轄の消防署等へ相談し、消防法令に適合させるよう求めています。
- 届出をする:住宅ごとに届出書と図面などの添付書類を都道府県知事等に提出します(住宅宿泊事業法 第三条)。原則として民泊制度運営システムを使います。
- 運営準備:標識の掲示(第十三条)、外国語での案内、宿泊者名簿の備え付けなどを整え、仲介を頼む場合は登録を受けた住宅宿泊仲介業者または旅行業者を選びます(第十二条)。
収入の目安と注意点
民泊の収入は、立地、季節、稼働日数、宿泊単価、清掃・委託・仲介手数料などで大きく変わるため、一律の目安は示せません。「誰でも月○万円」といった宣伝はうのみにしないでください。住宅宿泊事業は人を宿泊させる日数が1年間で180日を超えないものとされ(住宅宿泊事業法 第二条)、条例でさらに期間が制限される地域もあります。稼働できる日数に上限がある前提で、固定費を回収できるか試算しましょう。
また、「民泊で不労所得」「物件紹介と運営ノウハウをセットで提供」などとうたう高額な教材や副業サポートには注意が必要です。国民生活センターは、もうけ話をうたう情報商材をきっかけに高額な契約をさせられる相談について注意を呼びかけています。困ったときは消費者ホットライン188に相談してください。
守るべきルールと法律
| 項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 届出 | 届出をした者は旅館業法の許可なく住宅宿泊事業を営める(第三条)。届出をしない宿泊営業は原則として旅館業法の許可が必要 |
| 日数の上限 | 1年間で180日以内。1年間は毎年4月1日正午から翌年4月1日正午まで(観光庁) |
| 衛生・安全 | 床面積に応じた宿泊者数の制限や定期的な清掃(第五条)、非常用照明器具・避難経路の表示など(第六条) |
| 宿泊者名簿 | 名簿を備え付け、求めがあれば提出(第八条) |
| 近隣への配慮 | 騒音防止などを宿泊者に説明し(第九条)、苦情に適切かつ迅速に対応(第十条) |
| 定期報告 | 宿泊させた日数などを定期的に報告(第十四条) |
このほか、地域によっては宿泊税がかかります。たとえば観光庁のポータルサイトでは、東京都内で民泊を営業する事業者向けに、令和9年4月1日から宿泊税の対象施設が拡大されるとの案内が出ています(2026年10月時点)。レンタルスペースや駐車場でも、賃貸契約・管理規約で転貸や営業利用が禁止されていないかは必ず確認してください。
収入にかかる税金と確定申告
国税庁は、副業に係る所得の例として「シェアリングエコノミーに係る所得」を雑所得に挙げています(国税庁 No.1500 雑所得)。民泊についても、国税庁が2018年に公表した情報で原則として雑所得に区分されるとの考え方が示されていますが、規模や形態によって扱いが変わる可能性もあるため、迷う場合は税務署に確認しましょう。雑所得の金額は「総収入金額-必要経費」で計算し、住宅の水道光熱費などを経費にする場合は、事業に使った面積や日数で合理的に按分します。
- 所得税:給与を1か所から受け、全額が源泉徴収の対象となる人は、給与・退職所得以外の所得の合計額が20万円を超えると確定申告が必要です(国税庁 No.1900)。
- 住民税:所得税の確定申告が不要な場合でも、原則として住民税の申告は必要とされています(さいたま市の案内など)。お住まいの市区町村で確認してください。
- 開業届・青色申告:事業として営む場合は開業届の提出が必要です。青色申告ができるのは不動産所得・事業所得・山林所得のある方で、雑所得では利用できません(国税庁 No.2070、No.2090)。
前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超えると、請求書や領収書など現金預金取引等関係書類の保存が必要になります(国税庁 No.1500)。日頃から領収書と予約記録を整理しておきましょう。
よくある質問
Q. 賃貸マンションでも民泊はできますか?
貸主が民泊目的の転貸を承諾していること、マンションの管理規約で禁止されていないことなどが届出の前提です。無断で始めると契約違反になるおそれがあります。
Q. 180日を超えて営業したい場合は?
住宅宿泊事業の範囲を超えるため、旅館業法の許可や特区民泊など別の制度を検討することになります。要件は自治体の窓口で確認してください。
Q. 民泊の清掃代行も副業になりますか?
清掃を請け負う働き方もありますが、管理業務全般を報酬を得て受託する場合は住宅宿泊管理業の登録が必要になることがあります(住宅宿泊事業法 第二条)。業務範囲を契約で明確にしましょう。
まとめ
民泊は「部屋を貸すだけ」に見えて、届出、消防法令、管理規約、年間180日の上限、近隣対応、税金の申告まで、守るべきことが多い副業です。収入は条件次第で大きく変わり、赤字になる可能性もあります。就業規則を確認し、自治体と消防署に相談したうえで、無理のない規模から検討してください。制度は改正されることがあるため、最新情報は観光庁の民泊制度ポータルサイトで確認しましょう。