この記事で分かること

  • デザイン・イラスト副業の主な仕事内容と、向いている人・向いていない人
  • 始める前に確認したい就業規則・時間・初期費用
  • 受注までの始め方の手順と、収入を考えるときの注意点
  • 著作権・フリーランス保護法など守るべきルール
  • 源泉徴収・確定申告・住民税など税金の基本

本記事の制度・法令の内容は2026年10月時点で確認できた公的情報にもとづいています。制度は変わることがあるため、手続きの前には必ず公式サイトで最新情報を確認してください。

デザイン・イラストの副業とは(仕事内容と向き不向き)

デザイン・イラストの副業には、大きく分けて依頼を受けて制作する仕事と自分の作品を販売する仕事があります。

  • 受注制作:ロゴ、Webバナー、SNSアイコン、チラシ、書籍や記事の挿絵など
  • 作品販売:イラスト素材の販売、スタンプやグッズのデータ販売など

受注制作は、相手の要望を聞き取り、修正に対応し、期限までに納品する力が求められます。作品販売は自分のペースで進めやすい反面、売れるかどうかは分からず、制作した時間が収入につながらないこともあります。

向いているのは、描くこと自体が好きで、修正依頼や細かいやり取りを苦にしない人です。一方、本業が忙しく納期を守れる見込みが立たない人や、短期間でまとまった収入を求める人には負担が大きくなりがちです。

始める前に確認すること(就業規則・時間・初期費用)

会社の就業規則

まず勤務先の就業規則を確認しましょう。厚生労働省のモデル就業規則は副業・兼業を原則認める方向で改定されていますが、労務提供への支障、企業秘密の漏えい、会社の名誉・信用を損なう行為、競業にあたる場合は制限できる考え方が示されています。届出や許可が必要な会社も多いため、無断で始めず、ルールに沿って申請してください。本業でデザインを担当している人は、競業や社内素材の流用にも注意が必要です。

使える時間

1件の制作には、ヒアリング・ラフ・修正・納品と複数の工程があります。平日夜や週末に確保できる時間を先に洗い出し、無理のない件数から始めましょう。

初期費用

すでにパソコンや描画用の機材があれば大きな出費なしで始められますが、ソフトの利用料、液晶タブレット、フォントや素材のライセンス料などがかかる場合があります。最初から高額な機材をそろえる必要はありません。

始め方の手順

  1. 得意分野を決める:ロゴ、似顔絵、挿絵など、最初は1〜2分野に絞ると説明しやすくなります。
  2. ポートフォリオを作る:自主制作の作品を数点用意します。他人のキャラクターや写真を元にした作品は権利の問題があるため避けましょう。
  3. 料金・納期・修正回数を決める:作業時間から逆算し、修正は何回まで含むかを明記します。
  4. 受注先を選ぶ:知人の紹介、SNS、仲介サイトなどがあります。サイトを使う場合は手数料や規約、禁止事項を必ず読みましょう。
  5. 契約内容を文書で確認する:報酬額、支払日、納品物の範囲、著作権の扱いをメッセージや書面で残します。

収入の目安と注意点

デザイン・イラストの報酬は、案件の内容、使用範囲、経験、納期によって大きく変わり、「誰でも月○万円」といった目安は示せません。始めたばかりの時期は依頼がない月もあり得ます。単価の安い案件を大量に受けると、本業や睡眠時間を削ることにもなりかねません。

また、「スキルがなくても稼げる」「サポート付きで確実に収入が出る」とうたう高額な講座や副業サポートには注意してください。国民生活センターは、情報商材を買った後に高額なサポート契約を勧誘されるトラブルについて注意を呼びかけています。不安を感じたら契約せず、消費者ホットライン「188」などに相談しましょう。

守るべきルールと法律

著作権と納品物の扱い

著作権法では、著作者人格権や著作権は、登録などの手続きをしなくても創作した時点で発生するとされています(著作権法 第十七条)。著作権は全部または一部を譲渡できますが(同 第六十一条)、著作者人格権は譲渡できません(同 第五十九条)。そのため、納品時に「著作権を譲渡するのか、利用を許諾するだけか」「ポートフォリオに載せてよいか」を事前に取り決めておくことが大切です。

反対に、他人の作品やキャラクター、フォント、素材を無断で使うと権利侵害になるおそれがあります。素材を使うときは利用規約で商用利用の可否を確認しましょう。文化庁の著作権のページには、他人の著作物を利用する場合の考え方や、著作権侵害の相談窓口が案内されています。

フリーランス保護法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)

従業員を使わずに個人で仕事を受ける場合、事業者からの業務委託には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」が関係します。発注する事業者は、給付の内容、報酬の額、支払期日などを書面や電子メールなどで明示しなければなりません(同法 第三条)。また、従業員を使用する発注者などは、原則として納品物を受け取った日から60日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定める必要があります(同法 第四条)。条件があいまいなまま作業を始めず、明示を求めましょう。

収入にかかる税金と確定申告

所得の区分と20万円の基準

会社員の副業による所得は、内容によって雑所得や事業所得になります。国税庁は、副業に係る所得を雑所得の例に挙げ、業務に係る雑所得は「総収入金額−必要経費」で計算するとしています(国税庁 No.1500)。給与を1か所から受けていて年末調整を受けている人は、給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要です(国税庁 No.1900)。ここでいう20万円は売上ではなく、経費を差し引いた所得です。

住民税は20万円以下でも申告が必要

所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税には同じような申告不要の扱いがなく、原則として申告が必要と案内している自治体があります(例:名古屋市)。お住まいの市区町村で確認してください。

デザイン料の源泉徴収

個人に支払うデザインの報酬は、源泉徴収の対象になることがあります。国税庁の質疑応答事例では、ポスターのイラストへの報酬は「デザインの報酬」に該当するとされています。税額は支払金額100万円以下なら10.21%です(国税庁 No.2795)。ただし、給与を支払っていない個人などが支払う場合は源泉徴収の必要はありません(国税庁 No.2793)。報酬が源泉徴収されたかどうかは支払明細で確認し、確定申告で精算しましょう。なお、令和9年分以後は防衛特別所得税が加わるなど仕組みが変わる予定です。

開業届と青色申告

事業として行う場合は「個人事業の開廃業等届出書」を提出します(国税庁 No.2090)。青色申告は事業所得などがある人が対象で、正規の簿記で記帳するなどの要件を満たすと最高55万円(電子申告などの要件で最高65万円)の控除があります(国税庁 No.2070)。自分の副業が事業所得にあたるかは、規模や継続性によって判断が分かれるため、税務署などに相談すると安心です。

よくある質問

Q. 売上が少なければ何も手続きはいりませんか?

所得が20万円以下なら所得税の確定申告は不要な場合がありますが、住民税の申告は必要になることがあります。帳簿や領収書は申告の有無にかかわらず保存しておきましょう。

Q. 納品した絵をSNSに載せてもよいですか?

契約で著作権を譲渡している場合や、公開を制限する約束がある場合は載せられないことがあります。受注前に掲載の可否を確認しておきましょう。

Q. 会社に知られずにできますか?

知られないことを目的にするのではなく、就業規則に沿って届け出ることをおすすめします。無断の副業は懲戒などのトラブルにつながるおそれがあります。

まとめ

イラスト・デザインの副業は、手元の機材で小さく始められる一方、納期や修正対応の負担があり、収入は案件次第で安定しません。始める前に就業規則を確認し、契約では報酬・支払日・著作権の扱いを文書で残しましょう。所得が20万円を超えたら確定申告、20万円以下でも住民税の申告を忘れずに。高額な講座や「確実に稼げる」という勧誘には慎重に対応してください。

参考資料・出典